これまでのルールが通用しない明日
企業は、何かしらの価値を社会に提供するために存在し、その価値を生み出すために組織を組みます。その組織は、価値を生み出すための機能の連鎖と、その連鎖がきちんと稼働するための複数の役割から成ります。それらはきちんと定義され、有機的に連携稼働して価値を生み出し、そしてそれを顧客に届ける…組織運営の一種の理想論であり一般論です。
一方、日々新しい技術が開発され、様々な製品やサービスが世界中で次々に産声をあげ、それらはITによって全世界に瞬時に届けられ、日々ユーザーによって育てられています。ご自身のスマホの使い方や、SNSアカウントのタイムラインを観察していれば、このことは実感出来ると思います。
そんな刻々と変わるビジネス環境において、上記の理想論を持続的に体現していくためには、ビジネスにおける個の影響力を理解する必要があり、自社組織における各個人のレベルでの日々の些細な革新と変革をビジネスのあらゆる面で活かしていくことが肝要です。各個人の日々の思いつきやひらめきや工夫が、チームに活かされ、それがチーム力となり、チーム毎のそれが部隊に活かされ、部隊毎のそれが経営にフィードバックされ、現場と経営が一体となって組織の明日を作っていく…そんな営みに前向きになれる組織が、これからのビジネス環境でも持続的成長を遂げられる勝てる組織ではないでしょうか。
とはいえなかなか難しい
では、そんな個人レベルの日々の革新と変化は、どう汲み取られ、どう集約され、どう組織化され、どう組織力へと昇華されていくのでしょうか。貴社ではどんな取り組みをされているでしょうか?
定例のノウハウ共有MTGの実施、成功事例のメールによる部内共有、オフサイトMTGでの親睦交流会の実施など、様々なアプローチがあると思います。それらのいずれも効果的な取り組みです。ただ、それらのいずれにも準備と実施のための人件費と時間がかかります。かといってそれで本来の業務量を減らせる訳ではないので、結果的にエキストラワークの発生が余儀なくされる場合も多いです。得てしてこれらの取り組みが必要な状態にある組織は、何かしらの課題を抱えていることが多いため、エキクストラワークの発生そのものが50/50でリスクとなりえます。つまり、活動自体は前向きなものなのに、それに関わるメンバーの内面には、必ずしも前向きでないエネルギーを生み出すリスクがあるのです。
話を戻しましょう。やりたいのは、個人レベルの日々の革新を組織力に昇華することです。そして前提条件として、現状の業務量は維持か削減であり、ポジションの責務を全うするための直接的作業以外のエキストラワークの発生はアウトです。
個人のチカラを組織力へ
そこで考えたいのが、日々の個人的営みが【そのまま/自動的に】メンバーや組織に共有されるきっかけとなる仕組みです。個人がやることは(新しい仕組みを用いること以外)今までと変わりません。ポジションの責務を全うするために必要な行動を新しい仕組みを活用して行うだけでOK、というものです。言い換えると、「メンバーとの共有」を目的とした活動を、責務全うのために必要な行動とは別に行う必要がなくなります。個人は責務を全うするために時間と能力を100%使用することができます。
そんな仕組みはどうやったら作れるのか。それがSalesforceというツールです。
Salesforceは様々な機能やサービスがあるので、SFAでありCRMでもありますが、それが持つ本質的な強みは、個人レベルの日々の活動をデータとして記録し、それをメンバーに共有出来る点にあると考えます。
例えば、営業マンなら、日々の営業活動を1日の終わりに営業日報にまとめ、週の終わりにはそれを週報にまとめ、月末には月次の目標達成度合いと照らし合わせ、それをチームや部全員で確認する会議の場を設けているかもしれません。その会議の運営の仕方によっては、議題を個人のノウハウの共有に終始することも可能ですが、やはり数字の進捗確認や重要案件の戦略立案などに大半の時間が費やされているのではないでしょうか。また、何れにしても会議自体が存在し、そのために時間が割かれているのは見逃せない事実です。
Salesforceを使えば、日報、週報は不要です。月末の会議も原則不要と考えることができます。次のような動き方に変わるからです。※営業マンの職務内容や営業サイクルは各社で異なりますので、貴社環境に当てはめてお考え下さい。
Salesforceを使った営業マンの動き方
- 週初にSalesforceのスケジューラーを使って今週の訪問予定を登録します。重要な商談は月単位で確認し、あらかじめ登録しておくのもいいでしょう。
- お客様への訪問や営業TELなど、日々の営業活動を進めていきます。一つ一つの活動が終わったら、すぐに内容をSalesforceに登録します。
- 登録する内容は貴社の営業会議で確認しているポイントが網羅されるように、項目を設定しておきましょう
- 登録後に、次にいつ何をするのか(ネクストアクション)を必ず登録するようにしましょう。【新規行動】を使えば、その場ですぐに登録できます。
基本的には以上です。Salesforceに登録された情報は、上司部下も含めたメンバーにシェアされますので、情報を共有するための日報・週報作成は不要です。これにより営業マンの時間は、原理的には全て純粋な営業活動に費やすことが出来ることになります。※情報の共有範囲や修正の可否など、詳細はSalesforce上での初期設定が必要です。ここをどう上手く行うかも非常に重要です。
Salesforceへの活動記録によって、個人の日々の営みが可視化され、組織に共有されます。活動がリアルタイムに登録され、その内容が組織内にリアルタイムで通知/共有される状況を想像してみてください。どんなメリットがあるでしょうか。沢山考えられると思いますが、特に個人と組織という文脈に限定して一部を紹介します。
個人的メリット
- 管理者は案件の進捗度合いや具体的な内容をリアルタイムで把握でき、メンバーは他のメンバーの登録内容によりノウハウを得たり鼓舞されたりする事が期待できる。
- 個人が目標や役割に専念出来る環境が整い、その活動内容が可視化されるため、評価の透明性を担保できる。
組織的メリット
- 特にポイントとなる個人の工夫を記載することで、個のノウハウがそのまま個人に属さず、組織のものとして抽出/共有される。
- 属人的な要素とそうでない部分を区別出来るため、評価基準が明確になり、目標や管理指標など組織運営に透明性が担保される。
属人性の分離で勝てる組織へ
いかがでしょうか。あなたが現場の営業マンなら、何だか視界がクリアになって、やるべきことがはっきりしていく気がしませんか? あなたが管理者であれば、メンバーのパフォーマンスを引き上げるヒントが見つかる気がしませんか?
もうお気づきと思います。これはすなわちビジネスにおける属人性の分離を意味しています。営業部隊でも、コールセンターでも、日々のお客様や潜在顧客とのやりとりをデータ化・蓄積することで、新商品やサービス向上のヒントを得たり、あるいは人事などの管理部門でも人材の適材適所を考える際のヒントを得たりと、ビジネスの舵取りを行う上で最も説得力のある現場の情報を経営に渡すことに他なりません。
これまでは、従業員やチームの実績情報ばかりが経営者の手元に集まり、なぜその実績が出せたのか、誰がその実績を生み出すことに寄与したのか、それはどのような工夫やアイディアによるものなのか、どうやったらそこに汎用性をもたらすことができるかなどは不透明でした。Salesforceに日々個人レベルで情報を蓄積することによって、実績を生み出したメカニズムに関する情報を集約し分析することが可能です。それにより経営側は初めて組織の実情に即してビジネスの方向性を的確に検討し、それを体現する組織のあり方を的確に定義することが出来るのです。まさに、現場の活動の連なりが、組織の明日を作っていくのです。
Salesforceはそういった仕組みを作っていくチカラがある強力なツールです。売上を上げる、サービスの質を向上させる、顧客情報を集めるなど、Salesforceを使って出来ることは沢山ありますが、ぜひ「現場の情報を経営に渡し、現場x経営が一体となって組織の明日を作っていくための仕組み」という点に着目して、Salesforceへの行動登録をもう一度振り返っていただければ幸いです。